「サプリメントは天然食品。薬品じゃないから薬害についての心配はありません。」などいう宣伝文句で巷には多くの健康食品の類があふれています。化学物質でつくった医薬品は危険だけど、サプリメントは効き目がやさしく、副作用なんてないと思っていませんか?何にでも効く「健康食品」や誰でもすぐ効果 がでる「サプリメント」はありません。中には誤った摂取方法によってかえって健康を害することさえあるのです。
 ビタミンCやビタミンE、カロチンやカテキンなど抗酸化作用をもつ物質も人気があります。抗酸化作用とは活性酸素の酸化ストレスを防ぐ作用のことで抗酸化物質が多い人は生活習慣病が少ないという報告がその根拠です。しかし抗酸化物質が多い状態とは、野菜や果 物を多く食べるバランスのよい食事を摂取しているということが前提で例えばビタミンC一つの成分による健康効果 ではありません。抗酸化ビタミンを与えた臨床試験でカロチン、ビタミンE単独では心血管死亡を予防する効果 は認められませんでした。カロチンにいたっては逆に総死亡率の増加がみられ、臨床試験そのものが中止されています。
  アガリクスは他の茸と比べてβ-D-グルカンと呼ばれる多糖類が豊富で悪性腫瘍に対して効果 があると言われています。しかし、アガリクスの抗腫瘍効果 を検討したものは基礎研究ばかりで、実際に癌に効くという臨床データは皆無です。同様にプロポリスも抗腫瘍作用、抗菌作用などがあくまで基礎研究で認められているだけです。アガリクスもプロポリスも基礎研究の根拠だけで、あたかも病気の予防や治療に効果 があるかのように広告され、市販されています。その結果、プロポリスによって接触性皮膚炎や重篤な肝障害を起こした例が多く報告されています。
  鉄の含有量が極めて多いウコンが肝臓に良いされる広告が多いのにも驚かされます。慢性肝炎の肝臓内に鉄が過剰に貯蔵される肝障害が進展することが知られています。C型慢性肝炎ではわざわざ定期的に一定量 採血を行い体内の鉄分を少なくする瀉血療法や食事で鉄を制限して肝炎進行を阻止しようとする治療も試みられています。何も知らずにC型慢性肝炎の方が「肝臓に良い」と思ってウコンを摂取しているとしたら、まさに悲劇の人体実験をおこなっている状態だと言えます。
  サプリメントの中にも適量をバランスの良い食生活にプラスアルファとして摂取すれば、健康維持に役立つものもあるでしょう。しかし、成分を濃縮した錠剤やカプセルが普及していますから、もともとの病気の状態や服用している薬との飲み合わせも不明なままに自然の状態ではとても食べない量 をとってしまう危険性もあります。

  中国製のダイエット健康食品を服用した人が死亡したことは耳に新しいと思います。成分の中に甲状腺ホルモン、フェンフルラミンが検出されたそうです。フェンフルラミンは肥満の治療薬として欧米で利用されていましたが、肺高血圧による死亡例や、心臓の弁異常を起こすことが明らかになり、現在では使用されなくなったものです。このように成分内容が明らかにされないまま市販されている「健康食品」はもう論外です。
  癌が消えた、糖尿病が治った、肝臓の数値がみるみる下がった、アトピー性皮膚炎が消えた・・・・・などすべてに万能の物質はあり得ません。同じ成分でも病気や体質、年齢や性別 によって効果、副作用など身体の反応は千差万別であると認識ことが大事です。